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390 ノイズの唇1/2 sage 2007/03/11(日) 05:46:16 ID:3Ut4PRWk0 

俺のばあちゃんの家はかなりの田舎にある。 
というか、島。家から港まで車で6時間、 
そこから船で2時間かけないと行けない。 
それでも、小学生のときとかは楽しみだった。 
今ではただ遠いとしか感じなくなってしまったけど、 
夏と冬、1年に2回は行く。 

向こうには、2つ年上のイトコの姉ちゃんがいて、 
よく2人で遊んでた。姉ちゃんは泥汚れとか全然気にせずに、 
森の中で遊んだり川に入ったりと、俺の面倒を見てくれていた。 
大体、向こうには一週間ぐらい居た。 

そんで、なぜかは忘れたけど、その日は一人で遊んでた。 
今でも何でその日だけ一人だったのかは覚えていない。 
まあいろいろ一人で何かして遊んでたと思う。 
やがて夕方になり、日も落ちかけてくると周りはとても暗くなる。 
そろそろ遊ぶのをやめて帰ろうと思ったら、 
小橋の近くにある電灯の下に姉ちゃんが居た。 
後ろを向いて立ってて、電灯にもたれ掛かる様な感じで。 

姉ちゃん迎えに来てくれたんだ~、 
と思って近づくと、そいつが振り向いた。 
そいつのあまりの不気味さに足が一瞬で止まった。 


391 ノイズの唇2/2 sage 2007/03/11(日) 05:48:06 ID:3Ut4PRWk0 

なんつーか・・・目、鼻、口は福笑いみたいな、 
とってつけたような薄いパーツで、 
皮膚が見たことも無いぐらいツルツルだった。 
姉ちゃんと似ていたのは髪形だけで、 
あとは化け物以外の何でもなかった。 

一番キモかったのは、唇。 
ぎゅっと固く結ばれた唇が、 
ノイズみたいに不規則に折れ曲がりながら動いていた。 


「MWMW」 ←分かりにくいけどこんな感じ。 
そこからは考えよりも体が先に動いて、猛ダッシュ。 
死に物狂いでばあちゃんの家まで走った。 
家に着くと姉ちゃんがのんきにスイカ食ってた。 
今さっきの事を話したら、 

「そんなん知らんww」 
「今日は隣の家の引っ越し手伝ってた」 
「お前だけサボりやがってww」 

みたいな事と言われてヘッドロックかけられた。 
まあ、そんなことはそれ一回だけだったけど、 
今でも姉ちゃんと会ったら聞いたりする。 
「あの日、本当にあの電柱の下には居なかった?」 
って。 
そのたびに「知らんww」って言われるけどね。 

だって、忘れようにも忘れられないんだよ・・・あのノイズの唇が特に。 

『ノイズの唇』

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